弱小だったtdiがETロボコン東京地区大会で総合優勝できたわけ・前編

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2017年9月2、3日に早稲田大学西早稲田キャンパスにて開催されたETロボコン東京地区大会で、tdiのtadaima G2チームは、当社初となる総合優勝(1日目)を達成することができました。

今までランキング上位に入ることすらできない弱小チームだったtdiが、総合優勝することができた経緯と取り組みについて、tadaima G2で主に開発を担当していた私の目線から、2回に分けてお伝えします!

ETロボコンとは?

ロボットコンテストは各種さまざまありますが、ETロボコンは、規定のロボットをチーム独自のプログラミングで特殊なコースを走行させて、そのタイムを競争する、ロボットコンテストです。2017年は全国12カ所で地区大会が開催され、各地区大会の上位チームがチャンピオンシップ大会で戦いました。総参加チームは320を超え、私たちが参加した東京地区大会だけでも76チームが参加した、規模の大きな大会です。

ETロボコン2017公式サイト

順位の算出方法として、コース走行タイム(=競技順位)はもとより、プログラミングの設計(=モデル評価)自体も、同等に評価されることが特徴です。ETロボコンで上位になるためには、この「競技順位」と「モデル評価」両方で、高評価を得る必要があります。

tdi、ETロボコン参戦の歴史

tdiは、2003年に開催された、ETロボコンの前身であるUMLロボコンの第2回大会(詳しくはETロボコンの歴史をご覧ください)から、ETロボコンと名称が変更された現在まで、毎年大会に参加してきました。それほどの参戦の歴史を持ちながら、UMLロボコンでは入賞したことがあるものの、ETロボコンとなってからは入賞どころか上位に食い込むことすらできず、ETロボコンの企業スポンサーなのに勝てない時期がずっと続いていました。

近年も、少しずつ成績を上げてきてはいますが、ランキング上位には入っていません。

tdiのETロボコン東京地区大会実績(2014~2016年)

  出場チーム数 モデル評価 競技順位 総合順位
2016年 56 B 34位 20位
2015年 51 C+ 34位 34位
2014年 31 C- 18位 30位

この状況から、なぜtdiは、2017年に一気にランクアップして、総合優勝することができたのでしょうか?

理由1:ロボコン100%!!

2年前まで、tdiでは新入社員が主体となり、通常業務との兼任でロボコン活動を行っていました。兼任ということで、なかなか時間が取れないこともあり、新入社員メンバーのモチベーション低下という問題がありました。また、サポートしてくださる方々が社外勤務になり、サポーターなのに全然サポートできていない状況でした。

それでは「せっかくの活動が意味がない」ということで、会社としてロボコンに対する取り組みの刷新を行いました。一度ロボコンとしての仕組みを作り直し、全体を管理するメンバーを明確に定め、兼任から専任へと体制を変えました。これにより、約半年にわたるロボコン活動期間中、メンバーはロボコンに100%集中することができるようになりました。

この刷新が、tdiがランクアップした一番の要因だったのではないかと思います。

しかし、ただ兼任から専任に変えただけで勝てるのかというとそうではありません。総合優勝のためには、他の理由も欠かせなかったと考えています。

理由2:バランスのとれたチーム構成

プログラミング開発ができてレース競技で勝つだけでは総合優勝することはできません。前述の通り、ETロボコンでは競技だけでなく、モデルの評価も重要になってきます。

モデルは、競技本番に先駆けてモデルシートとして大会に提出し、「モデルの内容が正しく・分かりやすく記載されているか?」や「指定された機能を実現するための構成・方法が正しく記載されているか?」などの観点から審査されます。ETロボコンでは、自分たちの考えたことを、相手に正確に伝えることが求められるのです。

この幅広い評価指標に対応するため、しっかりと役割分担ができるバランスのとれたチームを構成できるかどうかが、活動の進めやすさを大きく左右します。

ETロボコン活動を振り返ってみて、私たちtadaima G2はバランスがとれたチームだったと感じています。

tadaima G2メンバーは、男性2名、女性2名の計4名。2017年度新入社員の内、ロボコン専任に自ら立候補した4名です。各メンバーのプログラミング経験(入社時点)と得意分野は以下の通りです。

メンバー プログラミング経験(入社時点) 得意分野
男性A ☆☆☆ 開発、設計(=モデル)
男性B ☆☆ 開発、安定性・精度上げ
女性C ☆☆ デザイン(イラスト作成)、モデルシート作成
女性D 文章力、表現力、地道な作業

※スキルレベル ☆☆☆:自宅でもプログラミングをするレベル、☆☆:学校で少し習ったレベル、☆:未経験

 

私たちのチームではプログラミングが得意なメンバーは、1人しかいない状況でしたが、それぞれの適性を活かすことで、開発もモデルシート作成もバランスよく進めていくことができました。その結果、tdiはETロボコン東京地区大会で、競技部門とモデル部門どちらも好成績を残すことができ、総合優勝につながりました。

1人のメンバーですべて完璧にできるのが1番ですが、実際にはそれは困難なことです。お互いの適性を活かしバランスのとれたチームを構成できると、優勝に一歩近づくと思います。

理由3:tdiロボコニスト心得6カ条

tdiは以前からETロボコンには出場していましたが、前年度のナレッジが引継がれる体制が、しっかり構築されたのは、この2017年度からです。それまでは、前回のナレッジを知らない新入社員がゼロスタートでロボコン活動を始めていたので、効率が悪いところがありました。私たちも例年通り新人であり、右も左も分からない状況からのスタートでしたが、体制ができたおかげで、先輩からたくさんアドバイスをいただくことができました。

その先輩からのアドバイスから、実体験を通じて特に効果があったと感じた部分を、tdiロボコニストの心得として6つにまとめたのでご紹介します。

1.名刺は常に持ち歩く

社会人ともなれば、名刺を持ち歩くのは当たり前のこと。それはロボコン活動においても同様です。ETロボコンを運営する実行委員や他チームの方々と仲良くなっておくと、いろいろな情報を得ることができます。自分のことを知ってもらうために、名刺は常備しておきましょう。配属当初100枚ほどあった名刺も、活動が終わったころには半分くらいになるほど、たくさんの方々と交流しました。

2.ETロボコン公式イベントには必ず参加する

ETロボコンでは、各種公式イベント(ワークショップ、試走会、懇親会など)が開催されますが、大会本番までに参加する機会は数回しかありません。この公式イベントは、他チームの状況を把握したり、現在の情報交換をすることができる貴重な場なので、逃すのはもったいないです。積極的に参加することで、自チームのレベルアップにつながります。

3.審査委員にはたくさん質問する

特にモデルを作る上では、ETロボコン実行委員の中でもモデルの審査を担当している審査委員に、「モデルを作成する上で困っていること」「どういったところを注目して審査するのか」などを、現状のモデル図を見てもらいながら、レビューをしていただくことでより良いモデルが出来上がります。たくさん質問したことで、審査委員の傾向や評価のポイントも分かりました。

4.進捗報告を毎日2回行う

報連相(ホウレンソウ)は社会人として当然のことです。その日に何をやりどこまで進んだのかという進捗を先輩や上司の方々に報告し、成果や遅れ・問題点といった情報をチーム全体で共有しておくことで、問題解決につながるので大切です。私たちのチームでは、毎日、朝と業務終了後の2回、進捗報告をすることを習慣化していました。

5.他チームとの交流は積極的に

公式イベントなどでの他チームとの積極的な交流は、合同勉強会などの場を設けるきっかけとなります。そこで新たな知識を得て、お互いに切磋琢磨しながら、より上のステップを目指すための良い刺激になります。tdiでは、ETロボコン出場チームの「ロボん飛行」さん(株式会社CIJ)、「TeamITI」さん(TDCソフト株式会社)、「下町ロボット」さん(UTシステム株式会社)と、プレ走行会や勉強会を行いました。この交流会のおかげで、私たちはワンランクステップアップできたと感じています。

6.ロボットには名前をつける

ロボットに名前をつけることで愛着がわき、ロボットへの接し方が変わります!もしかしたらこれが一番重要かもしれません。ちなみに、私たちのチームには、チーズ好きのメンバーがおり、ETロボコン東京地区大会で使用した走行体には「ちーず」とネーミングしました。

理由4:方針設定は勝利への鍵

ロボコン活動をしていると、トレードオフになることが多々あります。このような場合において、明確な方針があると、迷っている時間を短縮することができます。方針は、判断に困ったときにどう動くべきかを決める判断基準になるのです。

2017年度、tdiのtadaima G2チームでは、ロボコン活動を行う上で、「ETロボコンチャンピオンシップ大会出場」を大きな目標に掲げました。そして、それを達成するために、東京地区大会では「モデル評価Bランク以上」「競技順位上位5位以内」になることを目指しました。

さらに、この目標のために、「完全攻略」&「安全第一」をチーム方針としました。

「完全攻略」とは、「最大ボーナスタイム獲得」を意味しています。ETロボコンでは、コース上に「難所」と呼ばれる障害が複数あり、これをクリアするとボーナスタイムが付与され、実際のコース走行タイムからボーナスタイムが引かれます。結果、難所をクリアすればするほど、競技順位が優位になります。これを確実にするために「安全第一=安全性(ノーミス)を高める」ことにしました。

私たちのチームでは、開発していくなかで、なかなか思うように進まず壁にぶち当たったときや、「精度は悪いがタイムは速い」「タイムは遅いが精度は良い」といった、どちらを選択するべきか判断に悩んだとき、最初に設定した方針を優先することで決断しやすくなりました。

限られた時間のなかで、効率よく活動をするためにも、早めに明確な方針を立てて活動をすることをオススメします。

 

この他にも技術的な面での、総合優勝できた理由があるのですが、続きは次の記事で!

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執筆者プロフィール

Kubota Wataru
Kubota Watarutdi デジタルイノベーション技術部
配属後、ロボコン担当として、ETロボコン2017東京地区大会優勝・ITAロボコン2017優勝に貢献。現在は、AIチームの一員として、機械学習、ディープラーニングなどに挑戦しています。
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